百貨店の漆器売り場でよく耳にする「螺鈿(らでん)」という言葉。皆さんご存知でしょうか?
螺鈿は、古くから日本の伝統工芸である漆器に用いられてきた"装飾技法"のひとつで、貝殻の内側にある虹色の輝きを持つ部分を薄く削り出し、それを漆器の表面に貼り付けて装飾を施すことで、光の角度によって美しい光沢と色彩を放ちます。
漆器好きな方のみならず、その独特の美しさで多くの人を魅了する「螺鈿」について、今回は詳しく解説していきます。
螺鈿の歴史
螺鈿の技法は奈良時代に中国から伝わりました。交易品に多く見られ、模様も大陸的な絵柄が印象的です。日本では平安時代にかけて発展し、江戸時代に入ると一般庶民にも広がり、茶道具や箪笥(たんす)など、日用品にも螺鈿が施されるようになりました。
現代にも、その美しさと職人の技術が生き続けており、日本の伝統工芸品として高い評価を受けている螺鈿。
馴染みの少ない方からするとやや高級なイメージがありますが、最近では、普段の生活の中で使えるようなグラスや小物入れ、さらにファッションアイテムとして、アクセサリーやスマホケースにも用いられています。
後世に螺鈿技法を残すべく、試行錯誤しながら商品づくりを行っている職人の努力も感じられます。
螺鈿の特徴
螺鈿の特徴は、宝石のような美しい輝きにあります。貝や卵殻を材料とする螺鈿だからこそ生み出せる自然な輝きには、一つとして同じものがなく、一点ものという特別感も兼ね備えています。
使う貝の種類や色合い、磨き方や着色などによっても表現の仕方は様々で、アレンジの幅が広いからこそ、デザイン性や作り手の個性が感じられるのも魅力の一つです。
螺鈿の制作工程
漆を塗った箇所に、貝や卵殻などを切ったものを貼り付けます。
さらに上から漆を塗って乾かし、砥石で表面を研ぎ出します。
磨き粉で磨いていき、生正味漆を摺り込んで乾かすという工程を繰り返すことで、美しい輝きに仕上がります。